城は無限の可能性


山梨日日新聞No.49-50【令和6年8月5日発行】

 現在、城は観光資源としての価値を再評価され、多くの人々を引き付けている。2023年末に横浜で開催された国内最大級の城関係イベント「お城EXPO」には、2日間で来場者が約2万人と盛況であった。NHK大河ドラマ「どうする家康」や「麒麟がくる」などの人気番組の放映も、歴史人物とともに城への関心をさらに高めている。SNSや城アプリも影響力を持ち、例えばスマートフォンのアプリである「ニッポン城めぐり」は、全国3,000城の城郭を収録した無料GPSスタンプラリーとして多くのユーザに利用されている。

 このブームのきっかけは、2006年に(公財)日本城郭協会が選定した「日本100名城」といわれている。翌2007年に発売された「日本100名城公式ガイドブック」にスタンプラリーがあり(2020年には続編である「続日本100名城公式ガイドブック」が発刊されている)、それが多くの人を「城めぐり」へと導いた。
 私も妻と共に「城めぐり」を趣味にしており、現在「日本100名城」は82か所、「続・100名城」は71か所を訪問した。同協会のHPによると、各城で用意されているすべてのスタンプを収集した認定者は「日本100名城」が6,312名、「続・日本100名城」が1,793名(2024年7月19日現在)となっており、私もその仲間入りまであともう一歩というところでまで来ている。

 「日本100名城公式ガイドブック」「続日本100名城公式ガイドブック」には、山梨県から武田氏館(武田神社)、甲府城(舞鶴城)、新府城及び要害山城の4つが掲載されている。しかし、武田氏館、甲府城は賑わいを見せているが、新府城、要害山城は来訪者が少ない。これは広大な城跡の割には案内が不十分な点、山登りの必要性、知名度の低さが原因であると考えられる。全国的にも人気がある城はごく一部で、多くの城はあまり人気がないのが現状である。
 ではなぜ人気がないのか。一つに歴史人物や城自体の「知名度」の低さにある。全国的にも有名な歴史人物である「武田信玄」「徳川家康」「織田信長」「豊臣秀吉」などや、日本に存在する「現存12天守」と名高い「姫路城」「彦根城」などの他は「知名度」が低い。ただ、「知名度」が低い城も魅力がないわけではない。城がつくられた歴史的な背景や、その地域になくてはならない意義などといった城ならではのストーリーが存在している。
 例えば城の築城目的は時代と共に変遷していくものであり、それに付随する築城方法や築城場所、石垣の積み方などは、地域や日本の歴史を語る上で「そこにしかない」要素である。まさに現代に受け継がれた「地域資源」といえる。これを「知名度」に頼らない、「地方ならでは」の魅力的なストーリーとして再構成してはどうであろうか。私の経験上、「わかりやすく」「丁寧に」「面白可笑しく」構成された動画などを用意している城は、「良い場所」に出会えたと自分の満足度があがる傾向にある。この小さな実績こそが重要と考え「地域資源」として大きく育てていくきっかけになり、ひいては観光振興や交流人口の増加、地域経済の活性化につながるではないかと思う。

(公益財団法 人山梨総合研究所 研究員 在原 巧)