親子で避難行動の共有を


毎日新聞No.671【令和6年9月1日発行】

 防災の日の9月1日を含む、毎年830日から9月5日までの1週間は防災週間と位置付けられており、全国各地で防災訓練などが行われている。東日本大震災以来、地域や学校などで防災への取組みは加速しており、災害に対する備えは、ある程度充実してきていると言えるだろう。

 一方で、家庭内に目を向けた時、防災備蓄品などの備えはしていても、実際に災害が起きた時にどのように行動するのか、連絡はどうするのかなど、家庭内での防災に対する具体的な話が疎かにされてはいないだろうか。内閣府が公表している令和5年版防災白書では、「自然災害への対処など家族や身近な人と話し合ったことがない」の理由について、「話し合うきっかけがなかったから」の回答が58.1%で圧倒的に高くなっていることが、それを裏付けている。
 ではなぜ、家庭で、特に学齢期の子どもと防災の話をすることが必要なのか。それは、災害発生時に一緒の空間に居れば良いが、平日日中では、子どもと離れている時に災害に遭う可能性があるからである。災害により通信環境が寸断された場合、スマートフォン等が使用できず情報の入手が不可能な状況や、親と連絡が取れない可能性も想定される中で、子どもはどのように行動したら良いか。家族内で災害時の連絡手段や避難場所などについて、共通の認識を持っておくことが必要である。
 実際に災害が発生した際に、親は過去の災害経験やニュースから学んだ知識を得ており、具体的な対処方法を身に付けていることが多い。しかし、子どもは学校での防災教育や家庭での話し合いを通じて学ぶことはあるが、知識や経験が足りないため具体的な行動が起こせるとは限らない。
 いざという時に迅速に行動できるようにするためには、日頃から家庭内で親子が一緒に学び、避難場所、防災グッズの位置、連絡方法(災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板、公衆電話など)を確認しておくことで、防災についての知識を共有することが大切である。

 近年は災害が多発しており、いつ「自分事」になってもおかしくない状況にある。お子さんと防災について改めて話し合ってみてほしい。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 山本 晃郷