物流の2024年問題
山梨日日新聞No.51【令和6年9月16日発行】
2024年度に入って6カ月が経とうとしている。物流の「2024年問題」が取り上げられて久しいが、現状はどうなっているのだろうか。
2024年問題とは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、「自動車運転の業務」に対し、年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで発生する諸問題の総称である。具体的には、労働時間が短くなることで輸送能力が不足しモノが運べなくなる可能性や、必要な人を新たに採用できない人材不足の可能性などが指摘されてきた。
ただ、人材不足に関しては今に始まった話ではない。ここ数年、全国的に人材不足が深刻化してきており、物流の業界も例外ではない。人材の不足は潜在的な問題であり、2024年問題がさらに拍車をかけているといっても過言ではない。
帝国データバンクが昨年7月に行った「山梨県内企業の動向調査」によると、正社員の人手不足は46.5%で、非正社員は32.1%であった。これらは7月としては過去2番目 に高い割合であった。
2024年問題への対処として、物流に関わる企業は、物流に関する業務の効率化に積極的に取り組んでいる。具体的には、モノの積み下ろしなどの業務の効率化や、再配達をできるだけ少なくすることなどが挙げられる。
県内では、積み下ろしの効率化に関して、シャトレーゼの取り組みが注目されている。工場や倉庫での待機時間を短くするために、今まで台車で行っていたのをパレットに代え、積み込み時間の短縮を図っている。
山梨県も2024年問題に対して動き出した。県は今年の3月、「2024年問題検討委員会」を立ち上げた。委員は物流の関係者や学識経験者で構成され、筆者は委員長を務めた。第1回目の会議では、ラストワンマイルを中心とした物流に焦点が当てられ、置き配の推進など、どのようにしたら効率的に配送が行われるかが議論された。また、置き配を推進するための条例の策定が提案された。
今年の6月には第2回目の委員会が開催され、より具体的な条例の内容が議論された。ただ、条例を作ったからと言って、すぐに置き配が普及するとは限らない。ましてや、罰則規定のない条例の場合、効力はそれほど大きくないであろう。ただ、条例が作られることによって、我々消費者の意識が変わることは期待できるのではないだろうか。
物流に関しては、さらに考えさせられることがある。毎日の生活を振り返ってみると、日常的に購入している製造品や野菜などの生鮮食品が、県外から運ばれてきていることが少なくない。勿論、これは経済的合理性から行われていると考えられるが、長距離による運搬の無駄や、排気ガスによる環境破壊などの問題が脳裏をよぎってしまう。
2024年問題を考えることによって、人材不足や配送に関する効率が浮き彫りになり、社会問題として広く知られるようになってきた。このことは、2024年問題の良い面と言えるかもしれない。更には、前述した長距離輸送の無駄も併せて考えるきっかけになることを期待している。
(公益財団法 人山梨総合研究所 理事長 今井 久)