初めての中東
毎日新聞No.674【令和6年10月13日発行】
9月2日から8日までの日程で、山梨学院大学のゼミ生とオマーンの首都マスカットに行ってきた。初めての中東訪問の目的は異文化交流である。
今年のゼミのテーマは「チャレンジ」。4年生10人が卒業までの1年間で、何かにチャレンジすることをゼミ活動としている。当初は、海外での異文化交流に興味を持ったゼミ生が多く、自ら活動先を模索していたが、最終的には2人のゼミ生が本学と関わりのあるオマーンに行くことになり、首都マスカットにある「オマーン・ドイツ工科大学(GUtech)」に滞在して、現地の大学生や教職員の方と交流した。
中東に行く前は、オマーンのこと、そして中東のことはほとんど知らなかった。そして、イスラム教についてもほとんど理解していなかった。中東というと、イスラエルのガザ地区や、イスラエルとレバノンやイランなど、紛争のニュースが後を絶たない。また、イスラム教というと、過激派のことがたびたびニュースで取り上げられている。これらの情報から、「中東は危険」というイメージを持つ人も多いのではないだろうか。私はそこまで危険だとは思っていなかったが、緊張していたのも事実である。
しかし、実際に訪れてみると危険は全く感じなかったし、イスラム教徒の人々も、服装こそ違えど、違和感なく交流することができた。同時に、中東における民俗の多様性も感じた。滞在中お世話になった男性は、ヨルダン出身のオマーン人であり、学生の一人はドバイ生まれのイラン人だった。
今回の中東訪問での収穫は、先入観や固定観念がいかに間違っているかを再確認できたことと、新たな気づきを得られたことである。治安に関しては上記した通りであるが、その他にも、例えば今回関わってくれていた人はとても親切で、現地の学生も我々に気を遣って、素晴らしいおもてなしをしてくれた。いろいろな意味で大人だと感じた。事前に情報収集した際、「イスラムの人たちの優しさ」に関する記述が少なくなかったが、今回の訪問ではその優しさを体感することができた。そして、その優しさはイスラム教に関係しているかもしれないという気持ちが強まった。このような新たな気づきを得られた今回の中東訪問は、とても有意義だったと感じている。
(公益財団法人 山梨総合研究所 理事長 今井 久)