健康ポイント事業×地方創生
毎日新聞No.678【令和6年12月8日発行】
2016年5月、厚生労働省が「個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン」を発表しました。この指針を受け、全国の自治体や健康保険組合が、参加者の歩数、健康診断の受診、地域イベントへの参加などの健康行動に対してポイントを付与し、蓄積されたポイントを地域の商店での買い物や観光施設の利用、地域開催のスポーツイベント参加費の支払いに使える「健康ポイント事業」が広がっています。
 例えば、ウォーキングを行い2,000歩ごとにポイントが付与されるなど、行動に応じた仕組みが住民の健康意識を高め、行動変容を促すことが期待されています。これにより医療費の削減の可能性が広がると同時に、自動車利用を控えたり地域の農産物を積極的に選んだりすることで、環境負荷の軽減や地域経済の活性化にも貢献することが期待されています。
 このように「健康ポイント事業」は、地域の経済的価値を創造しながら住民の社会的ニーズに対応することで社会的価値を創造すること、つまり「共有価値の創造」を目指す取り組みであり、経済的・社会的に持続可能な社会の実現に大きく寄与するでしょう。
 政府はこうした事業に対し、「デジタル田園都市国家構想交付金」などを通じて、計画立案段階から審査や資金面で支援を行っています。このことからも、健康と経済の両立を目指す非常に有力な事業であることがうかがえます。実際、全国18以上の自治体において地域独自の課題に応じた事業が展開されており、それらの取り組みを通じたノウハウの蓄積が、持続的な地域の発展につながることが望まれます。
 さらに、新たに発足した石破茂政権のもと、政府は11月8日に「新しい地方経済・生活環境創生本部」を立ち上げ、地方創生をより一層推進する見込みで、関連交付金を当初予算ベースで倍増する方針も示されました。
今後、デジタル技術を活用することで、健康ポイントの管理や参加者の行動データの分析が進み、住民の健康と地域の経済を同時に支える新しい地方創生のモデルが構築され、地域社会に大きな影響を与える可能性に期待せずにはいられません。
(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 在原 巧)
