若者のこころの健康は
山梨日日新聞No.58【令和7年1月27日発行】
本欄に1月13日付で掲載していただいた弊財団研究員の寄稿「山梨県民の幸せの形とは」では、県民の幸福度と精神的な健康の関係性について述べたが、実際の県民の精神的な健康状態はどうなっているのか。
グラフは弊財団で今年度行ったアンケートの「精神的に健康な状態ですか」という問いに対する回答結果であるが、「私が気になったのは、20代の「あまりあてはまらない」と「全くあてはまらない」の割合の高さである。「全くあてはまらない」だけみると、30代の9.89%に次ぐ9.32%だが、「あまりあてはまらない」との合計は27.33%となり、全年代の中で最も高い。
令和6年厚生労働白書のテーマが「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」であることからも、こころの健康について、国も喫緊の課題ととらえていることがわかる。国が実施した「少子高齢化社会等調査(2023年度)」によると、多くの年代に共通する仕事上の人間関係、経済的な問題等への不安感は、20代でも高い割合を示しているほか、一方で、20代特有の問題として、「友人との関係」、「恋人との関係」、「学業・進路」などでは、他の年代より高い傾向が見られる。
また、交友関係に対する考え方について、「博報堂生活総合研究所【若者調査】(2024)」によると、30年前と比較し、「相手と意見が違っても反論はしない」、「仲間の中で一人だけ目立つのはいやだ」などの割合が高く、また、「人付き合いは面倒くさいと思うことが多い」の割合も高くなっていた。つまり、目立たないよう気を使い、空気を読む、波風立てないとスタイルである。意見が異なったままその場をやり過ごすということや意思に沿わない行動をとることはストレスとなりうるし、また、自分の本音を出しておらず、相手も本音をすべて出していないと感じることは、それが不安感の1つになる可能性もある。そのような人間関係をうまくこなさなければならないことも人付き合いが面倒だと感じる要因の1つであろう。
多少の悩みや不安があったとしても、心身ともに健康であればうまく対処していくことができるだろう。しかし、ストレスの要因が重なれば、こころの不調に陥りやすくなる。20代は大きくライフステージが変化する時期でもある。「学校」という同世代に囲まれていた人間関係から、「社会」という多様な人間関係の中の生活に変わる。意を酌んでくれた同世代とのコミュニケーションのギャップや言葉を濁した結果、意に沿わないことになるなど苦労する場面もあることが懸念される。
2月26日開催の弊財団のフォーラムでは、若者のメンタルに影響を及ぼす人間関係についてさらに皆さんと考えていきたい。弊財団のホームページをご確認いただき、興味があればご参加ください。
(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 清水 季実子)