環境福祉が目指す社会


毎日新聞No.683【令和7年2月16日発行】

 皆さんは「環境福祉」と聞いてどのようなものを思い浮かべるだろうか。環境と福祉の分野を巡っては、2016年に厚生労働省が「地域住民や地域の多様な主体が参画し、世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」として「地域共生社会」のあり方を示している。また、18年に環境省が「地域資源を活用して環境・経済・社会を良くしていくことで地域課題を解決し続け、自立した地域をつくるとともに、地域の個性を活かして地域同士が支え合うネットワークを形成する社会」として「地域循環共生圏」のあり方を示している。

 「地域共生社会」と「地域循環共生圏」が目指すことは多くの部分で共通しており、国は、両者の取り組みの連携により、「将来にわたって『ウェルビーイング/高い生活の質』をもたらす『新たな成長』を踏まえた社会像」として「循環型共生社会」の実現を目指している。こうした環境分野と福祉分野の連携の形が「環境福祉」であり、その具体化が「循環型共生社会」の実現である。
 「地域共生社会」と「地域循環共生圏」の同時実現を目指す「循環型共生社会」に向けた取り組みは、山梨や長野でも見られる。例えば山梨県では、認定NPO法人「スペースふう」が、従来取り組んできたリユース食器のレンタル事業に加え、活動拠点とする自治体の産後ママなどに対し、見守りや相談支援を兼ねてリユース食器を利用したお弁当の配達を行っている。
 また、長野県では、NPO法人「こどもの未来をかんがえる会」が、子どもや若者の居場所づくりに取り組みながら、活動拠点の一角を活用して、誰もが利用できる子ども服や本などのリユースコーナーを設置している。

 同様の取り組みを行っている団体は全国各地に存在する。共通するのは、意識的に「循環型共生社会」の実現を目指しているのではない点だ。最初の一歩は小さいながらも、取り組みを広げていく中で、徐々にさまざまな世代の地域住民などから賛同を得ながら、結果的に「環境福祉」という分野における「循環型共生社会」の実現を果たしている。今後は、こうした多世代の住民が、縦割り行政に縛られず分野横断的な活動に取り組んでいくことが、ますます重要になってくるのではないだろうか。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 宇佐美 淳