幸せな働き方の近道は?


山梨日日新聞No.59【令和7年2月17日発行】

 「幸せな働き方」とは何か。これは、多くの人が一度は考えたことがある問いではないでしょうか。近年、「ウェルビーイング」(Well-being)という概念が注目されています(この概念については、2025113日付け山梨日日新聞「山梨総研社会経済レポート」をご参照ください)。
 令和年6月に山梨総合研究所が実施した「ウェルビーイング」に関するアンケート調査では、「収入」と「やりたい仕事」の満足度に関する設問を設けました。その結果、どの世代でも「収入」と「やりたい仕事」には一定の関連が見られましたが、40代正規雇用の女性においては、その関係が弱いこと、つまり、「やりたい仕事をしているから収入が増える」とは限らないということが分かりました。では、その背景には何があるのでしょうか。

 令和5年の賃金構造基本統計調査によると、40代正規雇用の女性の平均年収は302.2万円で、同年代の男性(392.6万円)と比較すると約90万円の差がありました。さらに、30代以降女性の賃金の伸び幅は、男性と比べて小さく、これは昇給の機会が限られていることも一因と考えられます。
 また、令和年の社会生活基本調査によると、40代女性の日の仕事時間は297分(男性430分)で男性より短い一方、家事関連時間は216分(男性50分)と大幅に多いことが分かりました。つまり、女性は仕事と家庭の両立が求められることが多く、働く時間が制約されやすい状況にあるのです。さらに、年収別のデータを見ると、年収が高いほど仕事時間が長くなる傾向がありました。しかし、家事や育児の負担が重い女性にとって、仕事時間を増やすことは容易でないのが現状です。
 一方、令和4年の男女共同参画社会に関する世論調査では、「職場における男女の待遇」については、40代女性の70.7%が「男性の方が優遇されている」と回答しました。このことは、同世代の男性の回答(50.0%)と比較して高い割合であり、女性が職場で格差を感じることが多いことを示しています。
 これらのデータを総合的にみると、未だ長時間労働が収入増につながる現代社会の構造が浮かび上がってきます。その中で、仕事と家事・育児の両立が求められることから、十分な仕事時間を確保することが難しい40代正規雇用の女性は、結果的にキャリアアップの機会が限られることで、年収の伸び悩みにつながっている可能性があります。また、職場における男性優位というジェンダー不平等がこの状況に追い打ちをかけており、女性のキャリア形成への意欲を低下させる一因となっていると推測されます。それが、アンケート調査における「やりたい仕事」と「収入」の関係の弱さとして表れているのではないのでしょうか。

 山梨総合研究所では、226日(水)に「データ×フカボリ=シアワセ~新たな山梨の見つけ方~」というフォーラムを開催します。その中で、この問題について、人材育成、男性型社会構造、ワークライフバランス、固定的性別役割意識など、さまざまな視点から議論を深めることで、新たな気づきを得る機会にしたいと考えています。興味ある方はぜひご参加ください。 
 申込方法:下のQRコードより山梨総合研究所内申込フォームから申し込みください。

(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 在原 巧)