無理のない最初の一歩


毎日新聞No.684【令和7年3月2日発行】

 いよいよ3月に入り、次第に暖かい気候へと移ろい始めた。これまでは外出を控えることが多かったと思うが、これからは気軽に外出する機会が増えるだろう。「外出してなにかしようと思うが、なにをするかまでは決まっていない」という方がいれば、手軽に参加できる地域のウォーキングイベントに参加してみるのはいかがだろうか。
 ウォーキングは道具や環境を必要とせず、「いつでも」「どこでも」「誰でも」行うことができる最も手軽な運動である。しかし、ウォーキングを始める最初の一歩が、なかなか踏み出せないという人は割といるのではないかと感じている。こうしたときに、地域で開催されるウォーキングイベントは、そのきっかけになるだろう。

 昨年12月に、山梨県北杜市スポーツ推進委員協議会主催の「北の杜ふるさとウォーキング」が行われた。このイベントは、地域の自然及び天然資源の持続可能な利用と保護を目的とした「ユネスコエコパーク」に登録された南アルプス地域において、自然と親しみながら健康づくりを進めてもらうために毎年開催されており、今回で17回目となった。公園内を歩く2kmと、森の中や尾白川沿いを歩く7kmの2つのコースに分かれて歩くもので、市内外から約530人が参加した。筆者もこのイベントに参加したが、時折雪が舞うほどの寒さではあったものの、普段味わうことができない豊かな自然を満喫することができ、リフレッシュするいい機会になった。さらに、ゴールでは地域やボランティアの方々に温かく迎えていただき、軽食と温かいみそ汁に加えて、協賛企業からの差し入れもいただいた。私にとっては心身ともに満足するイベントとなり、来年度もあるようならまた参加してみたいと思った。

 こうしたウォーキングイベントの利点は、気軽に参加できることに加え、イベントを通して、その地域を知ることができることだ。そこでしか味わえない景色をゆっくり楽しむことができるとともに、イベントによっては、普段閉鎖している道を開放し、その時にしか歩けないという特別感も味わうことができるかもしれない。こうしたイベントをきっかけに、ウォーキングへの(無理のない)最初の一歩を、気軽に踏み出してみてはいかがだろうか。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹