Vol.319 地域発事業創造のすすめ ~地域繁栄に向けた起業メソッドの活用法~
国士舘大学 経営学部 教授 田中 史人
(元 山梨総合研究所 主任研究員)
Ⅰ 企業ネットワークから事業創造への進化
まずは、私の郷里(山梨県甲府市)の地域シンクタンクである山梨総研の重要な情報発信ツールNewsletterへの投稿の機会をいただいたことに、心より感謝申し上げたい。現在、大学教員として事業創造に関する調査研究、教育活動に従事しているが、山梨総研に主任研究員として所属していた時期がある。とても懐かしい思い出だ。山梨総研からは、地域創造や事業創造の実務や研究に携わる多くの研究者や大学教員、実務家が巣立っている。まさに、地域創造、事業創造のインキュベーター(孵化器)といっても過言ではないだろう。
ここで、山梨総研との関りを振り返りつつ、私自身の略歴を少し述べようと思う。山梨総研在職時代には、毎日新聞の山梨県版のコラムに、『「まちの起業家」創出がカギに~地域産業の活性化~』(2002年7月)、『地域に同一性ネットを~産業空洞化の処方せん~』(2002年11月)というテーマで寄稿した。加えて、2002年9月には、『企業ネットワーキングのすすめ~コア・コンピタンスへの特化と地域産業ネットワークの活用~』という題名で、Newsletter(vol.51)に投稿させていただいた。その内容は、初めての著作(『地域企業論~地域産業ネットワークと地域発ベンチャーの創造~』(同文舘出版、2004年))の礎となるものであり、企業ネットワークによる新規事業の創出・成長という地域経済の発展、活性化への提言であった。その後、北海学園大学経営学部(札幌市)を経て、東京都世田谷区にある国士舘大学経営学部にて教育・研究活動を続けている。一貫しているのは、「事業創造」、すなわち新規事業の創出・成長による企業の発展、ひいては地域の繁栄に資する調査研究活動を継続していることだ。特に、近年はスタートアップ(創業)や事業承継(M&Aによる経営者参入など)について強い関心を持っている。そして、私の研究の底流として脈々と流れているものが、「地域へのこだわり」である。生まれ故郷の山梨県甲府市のほか、愛知県名古屋市、北海道札幌市などでの勤務経験が、地域を舞台としたビジネス・エコシステム(繁栄する地域におけるビジネスの生態系)に関する造詣を深める基盤となっている。
その長年の成果として、昨年9月に著書『事業創造のすすめ~起業と成長のマネジメント~』(同文舘出版)を出版するに至った。「事業創造(Business Creation)」とは、文字通りビジネスを創り出すことである。本書は、この「創造」という概念を、ビジネスを「生み出すこと」(新規事業や起業)と、そのビジネスを「育て上げること」(企業の持続的な成長のしくみ)という2 つの側面で捉え構成した。加えて、経営学を基盤とした理論的側面と現場重視の実務的側面を併せ持つ内容となっている。これらの点が、本書の意欲的、挑戦的な試みであり、類書には無い独創的な特徴であると自負している。特に、新規事業の創出や起業を目指す人だけでなく、ビジネスの企画・創出・成長を志すすべての読者を対象に、わかりやすく、論理的かつ実用的な内容となるよう心掛けた。偉人の言葉、豊富な事例やコラム、チャレンジ課題なども取り入れ、組織内でのキャリアップに求められるビジネススキルを磨くための知識獲得に欠かせない内容を網羅している。本書の構成は図表Ⅰ(『事業創造のすすめ』羅針盤)の通りである。新規事業の創出と企業の成長には、未知の大海原に漕ぎ出す船団のごとく、「羅針盤」と「海図」が無くてはならない。本書がその役割を担えるよう願っている。
今回のNewsletter(vol.319)への投稿では、本書で明らかにしている事業創造の内容を地域産業の振興に進化させ、個別企業だけでなく、地域全体の産業発展や地域活性化の方向性を提言する。題して、『地域発事業創造のすすめ~地域繁栄に向けた起業メソッドの活用法~』である。23年前のNewsletter(vol.51)への投稿が『企業ネットワーキングのすすめ』で、奇遇にも題名に「すすめ」が重なった。23年間進歩がないといわれそうだが、地域振興を提言する言葉として的を射ていると腹落ちしている。余談として、この「すすめ」は、著名な「〇〇のすゝめ」と同義で、常日頃敬意を表している言葉であるが、私自身はペンマークの某大学とは特段関係が無いことを付言しておきたい。
Ⅱ 日本と地域の現状と課題
日本の未来を表すキーワードをあげてみると、人口減少、高齢化、財政赤字、地球環境問題、グローバル化といった用語が並べられる。高度に成熟した社会が、今まさに到来しつつあることは、防ぎようのない事実である。マネジメントの偉人であるドラッカーは、「すでに起こった未来」として、特に人口問題に言及している。そして、イノベーションによる事業創造は、このような未来を予見することで生み出される。
戦後の日本経済の変遷を端的にいうなら、1945 年の終戦から1985 年までの40年が、戦後復興期、高度成長期、安定成長期という右肩上がりの成長による「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまでいわれた繁栄を謳歌した時代となる。そして、1985 年のプラザ合意による円高、その後のバブル景気、バブル崩壊(1991 年)後の「失われた30 年」といわれる長期間にわたる景気の低迷期となる。すなわち、1985 年は日本経済のターニングポイント(折り返し点)といえる歴史的な年であり、今そこから40 年の月日を迎えようとしている。まさに、第二のターニングポイントに立っている。そのような状況の中、近年の日本経済は回復基調にあるとの認識が高まっている。企業の賃上げ率や株価はバブル崩壊以来の高水準となっており、企業業績も拡大傾向である。「失われた30 年」を抜け出し、COVID-19(新型コロナウイルス)パンデミックという3 年強のクローズド(閉鎖的)な経済環境を乗り越え、日本経済再生に向けた新たな出発点となるべき正念場であろう。
地域経済に目を転じると、大都市圏との格差拡大が見過ごせない状況となっている。まず、人口については、東京の一極集中が顕著である。例として、郷里の山梨県と、勤務する大学が立地する世田谷区を比較してみよう。1980年に80万人を超えた山梨県の人口は、2000年には90万人に迫ったが、23年には43年ぶりに80万人を割り込み、現在は79万人弱である。世田谷区は、1980年が77万人で山梨県を下回っており、2000年にも78万人弱とそれほどの伸びを見せていなかった。しかし、その後は基本的に増加傾向で、2025年1月で94万人強となっている。山梨県の人口は、2000年には世田谷区より12万人多かったのが、現在は15万人少なくなっている。なんと、この25年間で27万人の差がついたことになる。山梨県の人口がそのまま世田谷区に移ったというジョークにもならない話が、総数として現実的に起きている。もちろん、人口問題は、自然増減、社会増減があり単純な問題ではないが、地方圏の苦悩を端的に表しているといえるだろう。
企業活動についてみると、上場企業の数は、大都市圏(東京周辺、東海、京阪神)への集中傾向(85% 強)であり、上場企業の半数以上は東京都に立地している。上場企業は基本的に大企業が中心であるため、大企業は大都市圏、特に東京へ集中している。グローバルな巨大企業の本社立地地域についても同様である。世界の巨大企業の番付表として「フォーチュン・グローバル500」が毎年公表されている。500位以内の企業の総数では、日本企業はこの10 年あまりの間に3 割強減少しているが、地域別立地状況の東京一極集中の傾向は変わっていない。7 割以上の巨大グローバル企業の本社が東京に集中しており、上場企業よりも集中度が高い。反面、アメリカでは、世界経済の中心ともいえるニューヨーク市でも約13%(ニューヨーク州全体で14.5%)であり、2 番手はテキサス州のヒューストンの約4%(テキサス州全体で12.1%) である。まさに多極分散型の産業構造になっている。日本では、規模が大きくなるほど東京へ集中する傾向が見られるが、地方経済は中堅・中小企業によって支えられている。地方圏においては9 割以上の従業者が中小企業に勤務しており、まさに中堅・中小企業は地域の雇用の受け皿として欠かせない存在となっている。特に、地域中核企業としての中堅企業の役割の重要性が指摘されている。すなわち、地域経済を元気にする地域産業の振興には、中堅・中小企業を中核とした地域発の事業創造を成し遂げていく視点が欠かせない。
生産機能の日本国内への回帰、インバウンド需要の拡大など、日本の地域を舞台とした経済活動の胎動は、今まで見過ごされていた日本の地域を再認識させるであろう。世界最大級の半導体メーカーである台湾TSMC の熊本への進出、次世代の最先端半導体の量産を目指し設立されたRapidus(ラピダス)の北海道千歳地域への進出など、これからは特定地域の存在感が高まっていくことが予見される。
この機会は、日本の地域システム飛躍の恰好の契機となろう。これからの地域の未来を考えた場合、特に重要な視点は、予測可能な3 つの課題に適切に対応できるソリューション(解決策)を見つけ出すことである。その課題とは、地球環境問題、少子高齢化問題、グローバル化への対応である。今後一層の成熟度を増していく日本の地域社会の未来を予見しつつ、その中に成長のシーズ(種)を見つけなければならない。そして、その中核をなすものが、創造(Creation)と革新(Innovation)なのである。今こそ、「横並び」という日本的な意識・風土から、地域や個の創造性と革新性を認知する社会システムへと脱皮し、新たなイノベーションの創出による事業創造を成し遂げることで、成熟社会における地域の繁栄を目指す時である。
Ⅲ 地域発事業創造のプロセス
さて、本題の地域から萌え出づる事業創造の話に移っていこう。前述の通り事業創造の航海において必須のアイテムが、「羅針盤」と「海図」である。羅針盤は、事業創造の文脈では、事業創造を成し遂げる指針といえる。そして、事業創造を目指した大航海を正しい航路で導くツールが海図であり、それが、「事業創造のプロセス」とそのプロセスで推進する「起業メソッド」である。地域の文脈では、「地域活性化メソッド」といえる。事業創造のプロセスとは、①自己発見、②機会定義、③アイデア創造、④コンセプト検証、⑤事業化、⑥事業構築と続く航路であり、その航路(プロセス)を正しく安全に航行するためのツールが起業メソッド(地域活性化メソッド)といえる(図表Ⅱ)。
事業創造において最も大切なことは、「まずは、やってみること」である。しかし、「わかりきったこと」(すでに起こった未来)を予見せず、自分自身(自社)や関係者(顧客、取引先)、競争相手などを顧みずにただ闇雲に進むのは、最新鋭の軍隊に竹ヤリで突っ込むようなもので、初めから惨敗が見えている。負けない戦、すなわち、たとえ撤退しても再起できるような準備が必要であり、正しい事業創造のプロセスに従った展開が求められる。起業でも、新規事業でも、地域振興でも、そのアイデアに顧客(お金(=犠牲)を払って使ってくれる人)がいるのかが最大の命題である。ドラッカーは、事業の目的は「顧客の創造」であると断言する。また、シリコンバレーで多くの創業に関わった伝説のシリアル・アントレプレナーであるスティーブ・ブランクは、既存の製品開発モデルは「大失敗への道」であり、スタートアップは顧客の声に耳を傾ける「顧客開発モデル」を採用すべきと主張する。
そして、この顧客を創造するステップにおいて、特に重要なタスクは、「この世で出会える最も重要な顧客」であるエバンジェリスト・ユーザーを見つけ出すことだ。エバンジェリストは、キリスト教における伝道者という意味で、新しい製品・サービスを積極的に活用し、他者に啓蒙し広めていく役割を持つユーザーであり、ビジネス・アイデアの成否を握る存在といっても過言ではない。事業創造のプロセスの前半は、このエバンジェリスト・ユーザーを探し出す旅であり、後半はエバンジェリスト・ユーザーの声に耳を傾け、製品・サービスに磨きをかけて事業を成功に導く旅なのである。
ここで、地域産業の振興に事業創造のプロセスを活用するための注意点を挙げておきたい。地域産業の振興は、行政(地方自治体など)が中核となる場面が多く、補助金などを活用した「箱モノ」の整備が主体となる場合が多い。また、行政は単年度予算主義が中心であり、事業の継続的な運営と変化への柔軟な対応に難がある。事業創造のプロセスは、地域産業振興の「箱モノ」を作ることが目的ではなく、地域産業を愛しロイヤルカスタマーとなる顧客を創造するプロセスである。そこには、継続的な運営と変化への柔軟な対応が欠かせない。セブン&アイ・ホールディングスを日本一の小売・流通グループに成長させたアントレプレナーである鈴木敏文氏は、環境変化に即応した素早い意思決定の重要性を「朝令暮改を恐れるな」というキーワードを用いて指摘している。予算や事業計画(=朝決めたこと)にとらわれ、周囲(上司、同僚、部下など)に気を遣い、現在起きている変化(=夕方に起きている現実)に目をそむけることこそ問題なのである。ドラッカーのいう通り、「変化はコントロールできない」、自分自身がそれに合わせて柔軟かつ迅速に対応し、変化の「先頭に立つこと」が繁栄への王道である。
Ⅳ 地域発事業創造のプロセスの具体的展開
ここから、地域発事業創造のプロセス、すなわち地域産業の振興策(新規事業の創造など)を立ち上げるための具体的な手法について提言する。ここでは、a)前述したブランクの「顧客開発モデル」、b)その顧客志向の視点をより強調し、無駄を排除したリーン(Lean)な考え方から、時代が求める製品・サービスをより早く生みだし続けるための方法論である「リーン・スタートアップ」、c)数多くの優れた企業を立ち上げた熟達起業家の意思決定原理を定式化した起業メソッドである「エフェクチュエーション」という、3つのメソッドを基盤として解説する。図表Ⅱは、「事業創造のプロセス」を具現化したものであるため、それに沿って地域発事業創造のプロセスを解題していこう。
まず、①自己発見は、事業創造のプロローグといえる段階である。地域産業振興では、自分の地域を見つめ直すプロセスといえる(自我芽生)。立地地域が有する所与の手段から地域振興を始めることであり、所与(自我=地域認識)が出発点となる。まずは、地域の手段を「見える化」しよう。地域のハード資源、ソフト資源、他地域との関連性をリスト化し、地域が持つ資源の実態を客観的に評価する。図表Ⅲは、評価すべき地域資源・地域環境の項目である。その上で、地域として育成すべき方向性を定めて、基礎的な研究や能力開発を行うためのブループリント(青写真)を描いていく。
②機会定義は、自己発見(地域の現状把握)により明らかになった地域の実態から、顧客を発見していくフェーズであり、地域産業振興の事業機会を導き出すステップとなる。それは、顧客にJTBD(Jobs To Be Done:片づけるべきジョブ)があることを発見し、その課題を解決するためのソリューション(解決策=ビジネス・アイデア)の創出につなげるステージである。JTBDの核心は、「顧客にはただ片づけるべきジョブがあり、それを行うのに最も良い製品やサービスを『雇おう』としているだけ」という概念だ。例えるなら、顧客は掃除機が欲しいわけではなく、「部屋をきれいに保つ」というJTBD(=片づけるべきジョブ)のために、ホースでモノを吸い込む機能を持つ掃除機を「雇用」している。「部屋をきれいに保つ」ことがJTBD(=真の顧客課題)であり、そのソリューションが掃除機の購入と使用(=雇用)である。ここでは、対象顧客が当該地域に関連するJTBDを有しているかを探索し、CPF(Customer Problem Fit:顧客と課題の適合)を検証することで次のステージへ向かう。
③アイデア創造は、顧客課題(=JTBD)の最適な解決方法(ソリューション)を創造するステージである。現時点で課題に対応している既存ソリューションに対するGains(もっと欲しいもの) やPains(困っていること) を解決する方策を発想する。いくつかの解決案の中から絞り込む段階であり、製品・サービスのデザイン(設計)も含まれる。ビジネス・アイデアの創造は、思考の発散と収束をスパイラルに展開することで成し遂げられる。すなわち、地域産業振興の具体的なアイデアを発想し、まとめ上げていくことが求められる。ここでは、PSF(Problem Solution Fit:課題と解決方法の適合)を検証して、次のステージに移行する
④コンセプト検証は、SOL(Solution:解決方法)の磨き込み、顧客課題との検証、解決方法の見える化(=BM(ビジネスモデル)の構築)のステージであり、本当に顧客が存在するのかを検証する段階である(顧客実証)。すなわち、地域産業振興のアイデアの磨き込みと検証であり、SPF(Solution Product Fit:解決方法とプロダクトとの適合)を検証し、次のステージに移っていく。
⑤事業化は、事業を実現し地域産業振興という大海原に本格的に出航するための処女航海の段階である。この航海が本当に乗り切れるのか、すなわち、実際にプロダクトを購入する顧客がいるのかを実証するステージである。その中核は、MVP(Minimum Viable Product:顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)の構築と、そのプロダクトの有用性を含めたBM(ビジネスモデル)の実行と検証である。「まずは、やってみる」という姿勢により、最小限の予算で地域産業振興のアイデアを実現させ、その成果を評価する。その中で、地域が生み出すプロダクトを本当に愛するエバンジェリスト・ユーザーを見つけ出そう。ここでは地域発ではなく、顧客発(エバンジェリスト・ユーザーの言葉)のイノベーションが成功と成長のカギとなる。これにより、PMF(Product Market Fit:プロダクトと市場との適合)、すなわち、実際に需要を創造するプロダクトの検証を経て、新世界に向けた本格的な船出(事業構築)のステージにたどり着くことができる。
⑥事業構築のステージは、BM(ビジネスモデル)を本格的に実行することにより、より多くの顧客を開拓する段階である。この時期、市場に適合したプロダクトの情報を、より多くの潜在顧客に届けるためには、STPメソッド(Segmentation(市場細分化)、Targeting(ターゲット選定)、Positioning(ポジション決定)、4Pメソッド(Product(商品)、Price(価格)、Place(流通チャネル)、Promotion(広告・販売促進))といったマーケティング手法を用いることも大切である。また、今後の地域産業の繁栄を成し遂げるため、この時期に地域としてのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を構築しておくことが肝要となる。以上の6 つのプロセスを乗り越えることにより、地域発の事業創造が達成される。
Ⅴ 地域経済の輝ける未来に向けて
今回は、現在までの研究成果をまとめ上げて昨秋出版した『事業創造のすすめ』に基づき、その内容を地域産業の振興に進化させ、個別企業だけでなく、地域全体の産業発展や地域活性化の方向性を、「地域発事業創造のプロセス」として提言させていただいた。具体的なメソッドの詳細などについては、ぜひ本書をご参照いただきたい。今回、詳しく説明することはできなかったが、立地地域が企業成長を育む「成長のストラクチャー」として、産業集積とビジネス・エコシステムを取り上げ、その秘訣を詳しく論述している。地域産業の振興において、第三のイタリアやシリコンバレーで繰り広げられる産業ネットワークやエコシステム構築の秘訣を体得することは、輝ける未来へのパスポートになるだろう。特に、これからの地域に求められるのは、新しい企業が続々と萌芽するスタートアップ・エコシステムの構築である。今後は、このようなエコシステムの構築と地域発事業創造の取り組みに積極的に関与したいと思っている。ご関心をお持ちの方からのご連絡をお待ち申し上げている。
これも余談であるが、山梨中央銀行で「創業・第二創業スクール」が開催されているが、私が所属する一般社団法人せたがや中小企業経営支援センターの会員が講師を担当している。私自身は、その講師としてお伺いしたことはないが、郷里山梨と世田谷との縁を感じた。これも、事業創造につながる初めの一歩であろう。今回の論考が、山梨県における地域産業の振興や地域企業の発展の一助となり、元気なスタートアップや中堅・中小企業が続々と輩出されることで、地域経済の輝ける未来が成就することを祈念している。
〈著者 Profile〉
田中 史人(たなか ふみと) 国士舘大学 経営学部 教授
学位・資格:博士(経営学)、中小企業診断士
専門分野:事業創造、アントレプレナーシップ、ベンチャービジネス
近著:『事業創造のすすめ ―起業と成長のマネジメント― 』
https://www.dobunkan.co.jp/books/detail/003406
H P:https://fumito-lab.com/
Mail:fumito@kokushikan.ac.jp