食品廃棄を減らす行動
毎日新聞No.686【令和7年3月30日発行】
皆さんは、普段、食品の「消費期限」や「賞味期限」を確認していますか。簡単に言えば、「消費期限」は「食べても安全な期限」、「賞味期限」は「おいしく食べることができる期限」だが、これらの期限に関わる「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が、食品廃棄の削減などを目的に4月から改定される。
この二つの「期限」は事業者側で設定しており、安全性を担保するために表示期限を客観的に安全と認められる期間より短くすることができるが、今回の改正では必要以上に短くしないように求めている。
社会では食品廃棄に関心が高まっている。食料自給率が低い我が国においては、人口一人あたり一日おにぎり一個分の食品が廃棄されており、廃棄を減らすことは重要な課題である。
小売店は、廃棄を防ぐためタイミングを見ながら値引きやポイント付けなどを行っているが、こうした動きはコンビニ各社にも広がっている。また、飲食店でも「ドギーバッグ」と呼ばれる容器を用意し、食べきれない注文の持ち帰りを推奨する動きも浸透し始めており、廃棄の削減につながるだろう。
一方、消費者も、賢い行動が求められる。たとえば、豆腐や牛乳など生鮮食料品を買う場合、奥までのぞいて一番新しい日付の商品を引っ張り出していないだろうか。共働きの増加などにより食品をまとめ買いする家庭が増えていると想定され、消費期限が先の商品を買いたいという気持ちはわかるが、期限切れの廃棄が増えるこうした行動は慎みたい。
日付を気にせず、すぐ食べる場合の最前列からの商品購入は、「てまえどり」とも呼ばれている。こうした行動が定着すれば、値引きされた「お買い得品」はなくなるが、事業者の廃棄コストが減り、結果として通常の販売価格自体を下げる動きが期待できるのではないだろうか。
今回の改正では、事業者に対して賞味期限を過ぎた商品の食べられる目安やその場合の要加熱といった食べ方も合わせて情報提供することが望ましいとしており、消費者は情報を上手に活用して廃棄を減らせば、家計の足しにもなろう。
事業者、消費者双方が賢い行動をとることを通じて信頼関係が強まり、食品廃棄の減少による販売価格の引き下げが実現するという、多くの消費者に恩恵が及ぶ社会の到来を期待したい。
(公益財団法人 山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)