ゴルフ✕幸せ?
毎日新聞No.687【令和7年4月13日発行】
「ゴルフとは何か」と問われたとき、私は「幸せを生み出すスポーツ」だと実感を込めて答えたい。ゴルフは年齢を問わず楽しめるうえ、個人競技でありながら、他者との交流が自然に生まれる点も魅力だ。技術の上達を実感しやすく、一度ハマれば長く続けやすい。私自身も、スコアアップを目標に腕を磨くことの面白さを感じているが、その一方で、思い通りにならない難しさに向き合うこともしばしばある。人によっては、ゴルフを経営にたとえることもあり、その奥深さもまたゴルフならではの魅力だ。
2023年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」によると、ここ1年間に実施した種目について、ゴルフは「ウォーキング」「トレーニング」「体操」などに次いで6番目に多く実施されたスポーツとして挙げられている。また、同年の国内ゴルフ用品市場は3,092億円(株式会社矢野経済研究所調べ)にのぼり、その市場規模の大きさからも社会的関心の高さがうかがえる。
最近、仕事の場などで「ウェルビーイング(well-being)」という言葉を耳にする機会が増えた。これは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を指す概念で、世界保健機構(WHO)が1946年に提唱したものだ。慶應義塾大学・前野隆司教授は、ウェルビーイングを「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」という4つの因子で説明しているが、ゴルフに当てはめてみると、驚くほどよく重なる。
「やってみよう」は成長意欲を表す。技術向上に向けた努力や仲間と切磋琢磨することが、自分自身の成長につながる。
「ありがとう」は人とのつながりへの感謝。ゴルフ場で出会うスタッフや同伴者との交流が、プレーの質を高めてくれる。
「なんとかなる」は楽観的な姿勢。ゴルフはミスがつきものだが、前向きに次の一打へ挑む姿勢が楽しさを支える。
そして「ありのままに」は自分らしさを尊重すること。他人と比べず、自分のペースで楽しむゴルフは心の安定を生み出す。
こう捉えると、ゴルフはウェルビーイングを体現するスポーツと言える。そしてこの考え方はゴルフに限らず、他のスポーツにも広く通じるだろう。
私たち一人ひとりがスポーツを身体的だけではなく、精神的・社会的な健康づくりとして取り組むことで、より幸福感のある豊かな人生へとつながっていくのではないか。
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 在原 巧)