ドラマと地域


毎日新聞No.688【令和7年4月27日発行】

 今年の冬に放送された富士山麓を舞台にしたドラマ「ホットスポット」の影響で、郡内地域の主要なロケ地が賑わいを見せている。たびたび登場する喫茶店は「聖地巡礼」を目的に県内外から訪れる人で行列ができ、放送終了後の今でも行列は続いている。また、積極的に撮影に協力した山梨県都留市は、ドラマの1シーンを広報紙の表紙に載せ、市外からも入手希望の問い合わせが多くあったようだ。

 「聖地巡礼」が文化として認知されたのは、ドラマやアニメ等のファンが、作品の舞台となった土地を訪れる行動が話題になったことがきっかけだと言われている。それだけドラマやアニメ等のロケ地として使われることは地域経済に大きな影響を与えると同時に、地域の観光資源として定着する可能性も秘めている。例えば、平成30年度に山梨大学および山梨中銀経営コンサルティングが行った調査によると、山梨県身延町を舞台としたアニメ「ゆるキャン△」について、アニメ放映後の県内で開催された各種イベントの参加者は総勢6千人以上、県内での消費総額は8千万円超となると推計した。静岡県では「ゆるキャン△」の静岡県内のモデル地などを巡るスタンプラリーを実施したところ、1万2千人以上の方が参加した。その半数以上が静岡県外からの参加であり、令和3年度の静岡県内への経済波及効果が4億円超となったようだ。現在もアニメの舞台となった山梨県や静岡県では、県内を巡る周遊や地域内での消費につながるよう、アニメとコラボしたイベントや商品開発が続いている。

 ドラマ「ホットスポット」では、山梨県都留市の市役所など15か所でロケが行われ、そのロケで使用された小道具などを展示している市博物館「ミュージアム都留」では、平日の入館数が約5倍に増えるほど全国からファンが訪れている。また、聖地巡礼で訪れた方は、市役所や博物館だけでなく、舞台となった場所や景色など様々な場所を巡るだろう。
 残念ながらドラマは放送を終えてしまったが、その世界観はこの地に生き続けている。ドラマを通じて一人でも多く地域を愛するファンが増え、地域の魅力とともに、この世界観が語り継がれていくことを願っている。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹