令和時代の総合計画


山梨日日新聞No.64【令和7年5月19日発行】

 自治体には、法律で策定が義務付けられたものから文字通り自主的に策定するものまで、幅広い政策分野に様々な性格の計画が存在する。それらの最上位に位置付けられるのが総合計画である。
 この計画は、一般的に3つの階層から構成される。まちの基本理念や将来像、それらを実現するための基本目標など、福祉や環境などの分野毎に、いわばまちづくりの方針としての政策が掲げられている基本構想、その基本構想に記載の各基本目標を実現するため、高齢者福祉や障がい者福祉、自然との共生や生活環境の保全など、より具体的な施策が並ぶ基本計画、そして基本計画に記載の各施策を実現するため、予算と連動したさらに具体的な事務事業を記載した実施計画である。

 この総合計画であるが、20246月に公益財団法人日本生産性本部自治体マネジメントセンターが行ったアンケート調査の結果によると、総合計画の期間と首長の任期との関係について、年限は一致していないと回答した自治体が約9割となっていることが分かった。つまり、自治体の最上位計画である総合計画は、首長の政治的な方向性などにゆらぐことなく、まさに中長期的な視点に立ってつくられたまちづくりの方針であると言える。
 しかし、自治体の最上位計画であるにも関わらず、そこで暮らす住民自身が計画を手に取り、読んだことは少ないだろう。そうした意味では、近年よく見る、総合計画の策定過程にアンケート調査だけでなく、ワークショップなどを通じて、住民自身が参加することが重要となる。
 それとともに重要と言えるのが、職員自身、第一線で業務に従事するリーダークラスの職員や若手職員の積極的な関与である。自治体計画の策定にかけられる職員の数と時間が限られていることもあり、職員の関心は一般的に高いとは言えず、総合計画を手に取り、読む機会も減少してしまっているのではないだろうか。
 その影響は、各担当課の職員が日々の事務事業の実施に追われる中で、各種個別計画や、総合計画上の実施計画の数値目標の達成が評価の中心となり、上位の基本計画や基本構想との整合性、つまり本来目指すべきまちの基本理念や将来像の実現といった成果指標にまで目が行かない状況を生んでしまっている。
 そうした状況下において、どのように職員自身が総合計画を意識していくのか。1つの方向性として、例えば、総合計画の策定過程において、職員ワーキンググループを設置し、住民からのアンケート調査やワークショップの結果を踏まえるとともに、職員が取り組んでいる事務事業や施策について振り返る中で、どのようなまちにしていきたいのか、そのためには具体的にどのような事務事業が必要とされるのか、普段比較的意識する個別計画だけを確認するのではなく、総合計画に位置付けられている施策や政策との結びつきを常に意識することが重要となる。
 そのためには、事務事業や組織のあるべき姿を探り、その実現に向けた道筋を体系的に考えることが求められる。こうしたいわゆるロジックモデルの活用などを通した業務への取り組みは、人材育成という面においても有効であろう。

 令和時代の総合計画は、その策定過程において、住民と職員がともに自らのまちの中長期的なビジョンを考え対話し、顔の見える関係の中で協働していくこと、それが何より大事になるのではないだろうか。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 宇佐美 淳