お墓のこれから
山梨日日新聞No.86【令和8年7月20日発行】
お墓参りに行くと、手入れがされず、雑草が伸び放題のお墓が目に付くことがある。そこには、人口減少や核家族化などにより墓地の管理が困難、継承者が不在となっているという背景がある。令和5年9月に発表された総務省の「墓地行政に関する調査」によると公営墓地・納骨堂を有する市町村で、無縁墓があると回答した市町村は、58.2%となっている。そのような中、管理の手間が少ない樹木葬、永代供養や墓じまいといった選択肢も知られるようになり、墓地の在り方やそれに対する人々の意識も変化してきている。
令和7年度に東京都が実施した「お墓と都立霊園」に関する都政モニターアンケートでは、お墓に関する心配事として、「維持管理の経費と手間」が最も高く55.2%、次いで「お墓の承継者(負担をかける、いない等)」が47.8%となった。また、お墓に対して重視する点としても、「維持管理の経費と手間」が73.4%で最も高くなり、次いで「お墓に行くまでの距離や交通の利便性」が62.3%となった。これらのことから、維持管理の手間を減らしたいこと、お墓を次の世代へ受け継ぐことが難しいと感じていることがうかがえる。その他にも、お墓の使用期間を限定する仕組みについて、「後世の代にお墓の負担をかけさせないで済む」や「承継者に悩まなくて済む」、「経済的・維持管理の負担が軽くなる」など肯定的な回答の割合が高く、墓地を恒久的に維持していくことへの意識が変化しているといえる。
人々の意識は変化しているものの、実際に行動を起こすのは非常に難しいテーマであろう。一般的な墓地は、個人ではなく、家として使用することが多いため、個人の希望だけで決定したり、変更したりすることが難しい。親からすると子に管理の負担をかけさせたくないという思いもある。まずは、自分の希望から、次に夫婦間や親子間など少しずつ意思を確認していく範囲を広げ、それぞれがどう思っているのかなど早めに気持ちのすり合わせをしておく必要があるのではないか。難しいテーマだからこそ、早めに考えていくことが重要である。
実際、私の両親は、お墓をどうするかということについて、夫婦で十分に話し合っていなかった。母は父の死後、自宅から自転車で行ける距離にある都立霊園の合葬墓を選択した。夫婦2人分を確保したが、父と十分に話し合えないまま合葬墓を選択したため、これでよかったのだろうかと悩んでいた。父が生前向き合っていれば、ここまで迷うことはなかったのではないか。
先日、家族で合葬墓のお墓参りに行った際、高齢の女性が「お父さん、来たよー」と話しかけているのが聞こえ、杖をついてでも献花にやってくるその女性にとっては、ここは大切な心の拠り所なのだと感じた。その姿を見て、残された者にとって拠り所となるものがあることも大切なのだと気づかされた。
現在は、様々な埋葬や墓地の形態を選択できる。だからこそ、本人だけでなく、管理を担うべき残される者と元気なうちに思いを伝え合うことが、何より大切なのではないか。それにはまず、本人がきちんと考え、希望を残される者に伝える必要がある。私も、残される者である家族と向き合い、自分と家族にとってより良い形を模索していきたい
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 清水 季実子)