Vol.284-2 自分らしく働くための副業・複業支援のしくみづくりに向けて ~WEBアンケート分析を通じた仮説の構築~


3.副業・複業は、都市部と山梨を結ぶカギになるのか?

 ここからは、都市部、特に東京に居住する人を対象に、自分自身のキャリア形成における地方との関わりについてみてみたい。
 東京に居住する2050代に行ったWEBアンケート結果によると、仕事やボランティア、移住など、地方との関わりに関心があるとの回答は40代が51%で最も高く、20代が42%で最も低くなっているものの、全ての世代で4割以上となっている。

 

3 東京在住者による地方での活動に対する関心

 

 さらに、地方との関わり方についてみた場合、2040代では、副業・複業としての関わりが最も高く、特に30代が58%と突出して高くなるなど、年代別に違いがみられる。
 「副業」とは、正社員などとして働く本業の他に仕事を持つことであり、「複業」は複数の本業を持つことを意味するが、本アンケートの回答者は会社員が最も多くなっていることを考えると、多くは「副業」を想定しているものと考えられる。
 一方50代については、ボランティア活動としての関わりが最も高くなっていることから、仕事としてよりも、自分自身の興味関心や価値観が強く表れているように思われる。
 また、本業としての関わりは、全ての世代として2030%台とそれほど高くないものの、2030代が比較的高い割合となっていることから、若いうちから地方に転職することによる新たなキャリア形成へのニーズもうかがえる結果となっている。

 

4 東京在住者が望む地方との関わり方(複数回答)

 

 多くの東京在住者が地域での活動に関心を持っているものの、実際に行動に移しているのはごく一部に限られる。地方との関わりに関心があるとの回答のうち、実際に何かしらの行動を起こしているのは全体の3分の1であり、その内容は、WEBなどの情報サイトへの会員登録や東京で開催される相談会やセミナー等への参加がそれぞれ1割程度であるものの、地方での活動への参加や就業などのより積極的な行動を起こしているのは一桁台にとどまっている。その中でも20代は、東京や地方へのイベントに参加したり、仕事として地方に関わっている割合が比較的高く、また、30代や50代では二地域居住の割合も比較的高くなっている。
 また、地方での仕事としての関わりについては、本業では20代、副業・複業では30代がそれぞれ最も高くなっており、他の世代と比較して、仕事面で地域との関わりを積極的に築いているとみられる。

 

5 地方に関心のある東京在住者の地方との関わりに向けた行動

 

6 地方に関心のある東京在住者の地方との関わりに向けた行動(複数回答)

 

 地方には関心はあるものの、実際に地域と関わりを持つための行動につながっていない背景にはどのようなことがあるのか。
 WEBアンケートにおいて地方で活動しようとした際に不安に感じることを尋ねたところ、各年代の9割以上が何かしらの不安を感じている。具体的には、50代を中心に「十分な収入が得られるか分からない」といった収入への不安、30代を中心に「どの地方で活動したらよいか分からない」といった地域の選択に関する不安、50代の「地域コミュニティに馴染めるか分からない」といった人間関係への不安、4050代の「やりたい仕事や活動を見つけるのが難しい」といった場所や活動を見つけることの難しさなどの割合がそれぞれ高くなっている。

 

7 地方に関心のある東京在住者の地方との関わりへの不安(複数回答)

 

 以上の結果から、東京在住者の多くの人は、関心を持ちながらも地方と関わりを持つ上での不安から一歩を踏み出すに至っていない状況であることが分かった。この潜在的ニーズが「一歩を踏み出す」ことにより顕在化していくためには、どのような後押しが必要なのかについて明らかにするために、より詳細なニーズについて分析をしてみたい。

 

4.地方に関心を持つ「タイプ」とは?

 地方との関わり方について多様なニーズや不安がみられる中で、地方に関心を持つ東京居住者はどのようなタイプに分類することができるのだろうか。WEBアンケートのうち、地方との関わり方やその理由について分析した結果、「しごと重視―つながり重視」軸と「自己価値観―他者評価」軸の2つの軸を抽出した。
 「しごと重視―つながり重視」軸とは、地方への関心が、本業や副業・複業などの仕事を得ることや収入を得ることを重視する方向性に対して、ボランティア活動など同じ想いを持った人とのつながりや友人関係によるつながり、また地方における新たなつながりを重視するという軸である。「自己価値観―他者評価」軸とは、出身地で暮らしたいとか移住したい、または自分らしく働きたいといった、暮らし方や働き方に対する自分自身の意志や価値観を重視するのに対して、友人・知人の勧めやそのつながりのある地域であること、またはその地域自体に魅力があることなど、自分以外の他者や客観的な評価などを重視する軸である。このように、前者を縦軸、後者を横軸として、地方に関心を持つ東京在住者を、対象人数が多い順に以下の5つのタイプに分類した。

 

8 東京在住者における地方に関心を持つタイプ(数量化3類+クラスター分析)

 

①「副業・複業で自分探し」タイプ

 副業を通じて自分の強みやキャリアを築いていくことを志向するタイプ。地方に関心を持つ人の25%を占める。 

②「ボランティアで自己実現」タイプ

 自分の問題意識に基づくボランティア活動への参加を通じて自己実現を目指すタイプ。地方に関心を持つ人の24%を占める。 

③「しごと中心」タイプ

 地方を転職先と捉え収入を得ることにつなげたいと考えるタイプ。地方に関心を持つ人の21%を占める。 

④「自分らしく」タイプ

 特に強い想いはないが、自分らしく自然体で地域と関わることを志向するタイプ。地方に関心を持つ人の21%を占める。 

⑤「自分軸でチャレンジ」タイプ

 自分自身の価値観に基づいて、目指すべき働き方を実現することを目指すタイプ。地方に関心を持つ人の9%を占める。

 各タイプを性別や年代構成でみると、「副業・複業で自分探し」タイプは40代男性の割合が21%で最も高く、次いで30代男性などとなっており、若手社会人よりも、就職後1020年程度の経験を積んだ中堅の割合が高くなる傾向にある。また、他のタイプと比較すると、性別や年代の構成は、「しごと中心」タイプと類似していることがうかがえる。
 一方で、20代の若手社会人の割合が高くなっているのは、「自分らしく」や「自分軸でチャレンジ」タイプであり、仕事やつながりを問わず、自分自身の価値観を重視する傾向がみられる。
 こうした結果から、自分のやりたいことにチャレンジしたいと考える20代に対して、これまでのキャリアを仕事に活かしたいと考える3040代とみることができるだろう。

 

9 タイプ別にみた性別・年代構成

 

 また、タイプ別にみたキャリア形成に関する悩みは、他のタイプと比較して、「副業・複業で自分探し」タイプ及び「自分らしく」タイプに強く表れている。前者は、地方の選択ややりたい仕事や活動を見つけること、さらには収入に不安を感じる割合が高くなっている。年齢的にも家庭を持つ割合が高く、自ずと収入に対する不安が強くあるものの、自らのスキルや強みに自信が持てないことから、活動の場をどのように求めたらよいのか分からないという不安が浮き彫りとなっている。後者については、自分らしく働くことを強く望む一方で、それがどこで実現できるか、また自分自身のキャリアやスキルがどれくらい通用するかという不安を感じている。このことは、自分らしくありたいという気持ちとそれを目指すことで直面することが想定される厳しさに対する不安が表れていると推測される。

 

10 タイプ別にみたキャリア形成に関する悩み(複数回答)